2019年12月2日月曜日

デスク席から(61)「悲しみ乗りこえ進めた歩み」

「娘がこの世からいなくなった悲しみと、受け入れることができない現実。そして後悔…。僕たちが生きている限りは一生背負っていかなければならない課題です」
こう語ったのは、四日市市に住む寺輪悟さん(51歳)。
今から6年余り前の2013年8月、当時中学3年生だった女子生徒が少年(当時高校3年生)に襲われ、三重郡朝日町の空き地で遺体で発見されるという事件がありました。
とてもショッキングで痛ましい事件でした。
寺輪さんは、亡くなった女子生徒のお父さんです。
「どん底で悲惨だった」と当時を振り返る寺輪さんは「(被害者遺族は)世間から早く忘れ去られたいと思っている」とも話します。


しかし、そんな寺輪さんが行動を起こし、取材にも応じて下さいました。
犯罪の被害に遭った家族や遺族へのサポートがあまりにも少ないことに気づき、条例の制定を求める動きを起こしたのです。
三重県の鈴木英敬知事に手紙を送ったのが契機となり、行政や議会も比較的迅速に対応。三重県ではことし4月から、四日市市では10月から、犯罪被害者らを支援する条例を施行しました。
その中では、見舞金の給付や広報啓発、引っ越しを余儀なくされた場合の転居費用の補助(市のみ)などが盛り込まれています。
しかし「まだまだ始まりに過ぎません。犯罪の抑制や命の大切さのよびかけなど様々なことに取り組んでいきたい」…娘の遺影を見ながら、寺輪さんは静かに語りました。
そして、愛娘への思いも話して下さいました。「小学生の頃かな。『パパと結婚する』って言ってくれたことが一番嬉しかった」と。

この特集は、12月4日(水)のMieライブで放送。
コメンテーターは、ジャーナリストの大谷昭宏さん。

神戸連続児童殺傷事件や大阪教育大付属池田小事件などを取材した大谷さんは「自分は犯罪の加害者にはならないと誓うことはできるが、絶対、犯罪の被害者にはならないと言い切れる人はいない。いつ誰がどこで被害に遭うかわからないのです」と話しました。
そういう意味でも、寺輪さんが進めた歩みは大きな一歩といえるのではないでしょうか。

※なお、12月17日(火)午後1時30分から、三重県人権センター(津市)で、
「犯罪被害者支援を考える集い」が開かれ、犯罪被害者遺族の本郷由美子さんが
「いのちの重さを見つめ続けた18年」と題して講演する予定です。


                              小 川

2019年11月5日火曜日

デスク席から(60)「県民のみなさんと訪れた島」

ハンセン病問題の取材に関わって18年になります。
といっても細々とではありますが…。
最初に取材させてもらったのは、ハンセン病療養所で暮らす三重県出身者を対象にした「里帰り事業」。
三重県が行っているもので、始まって半世紀以上が経ちました。
療養所入所者に短期間でも故郷に帰ってきてもらうのが目的ですが、実家まで帰れた人は少なかったといいます。
コースは、伊勢神宮やなばなの里、赤目の滝、榊原温泉といった観光地が中心。
それでも参加者からは「三重の空気が吸えて嬉しい」「やっぱり古里」といった声が聞かれました。

私が取材を始めた2001年頃は、三重県出身者が暮らす療養所のうち3施設から参加がありましたが、ここ数年は、岡山県の邑久光明園のみ。毎年春に数人が帰ってこられるだけです。
その理由は、言うまでもなく高齢化。
入所者の平均年齢は86歳。お亡くなりになったり、身体が不自由な方が多くなりました。
そんな中、三重でハンセン病問題に取り組む人たちから、こんな声が聞かれるようになりました。
「三重に帰ってもらうのが難しいなら、こちらから出かけていこう」と。
そんな声を受け先月、実現したことがあります。

ハンセン病療養所フィールドワーク。
県民から希望者を募って岡山県にあるふたつの国立療養所を訪ね、隔離政策の歴史を知り三重県出身者と交流してもらおうというもの。
ふれあい福祉協会の助成を受けて三重県、ハンセン病問題を共に考える会、三重テレビ放送が実施し、約30人が参加してくださいました。
1日で岡山往復というハードなスケジュールでしたが、参加者の皆さんは患者が収容された桟橋や一時的に収容された建物を目の当たりにし、納骨堂にも手を合わせました。
そして、三重県出身の入所者とも懇談。
帰りのバスで参加者からは「国の政策によって人生がゆがめられると思うとこわい」「入所している人がみな明るくてほっとした」「全く光のあたっていない問題が社会にあることに気づいた。それが前進するように努めたい」などという感想が聞かれました。
このフィールドワークの模様は来年1月に特別番組として放送する予定ですが、11月6日(水)のMieライブ(午後5時40分~)の中でもお伝えします。

つらい体験を語って下さった入所者のみなさん、療養所職員の方々、そして参加者のみなさん、
ありがとうございました。

2019年9月3日火曜日

デスク席から(59)「行ってみませんか?岡山へ」


皆さんは、夏休みをどのように過ごされたでしょうか。
このブログのタイトルを見て観光を連想された方がいたかもわかりませんが、今回のテーマはちょっと違います。

ハンセン病問題を、2002年から細々とではありますが、取材してきました。県庁の元ハンセン病担当官と療養所入所者の絆、三重県出身のハンセン病回復者の63年ぶりの帰郷、戦争とハンセン病の関係、行政主催の「里帰り事業」…。
取材の中で、回復者(療養所入所者)の皆さんは、勇気を出してつらい経験を話してくれました。
「療養所へ収容される時はリヤカーで」「ハンセン病と診断されたら家が真っ白になるまで消毒された」「3人の娘を置いて来るのはつらかった」「差別というものは人間だけがするもの」…しぼり出された言葉から、たくさんのことを学ばされました。
多くの苦しみを乗り越えてこられた皆さんには「強さ」「深さ」「大きさ」…そんなものを感じ、何度も車を走らせました。私がおもに取材に向かった先は、岡山県瀬戸内市の国立ハンセン病療養所・長島愛生園と邑久光明園。岡山、特に瀬戸内市は、私の“第二の故郷”といっても過言ではありません。

しかし取材を重ねる中で、寂しい変化もありました。
かつては、療養所から県外へ出て講演される方が少なからずおられました。三重県でも伊賀や津、松阪、鈴鹿などで回復者の講演会が開かれましたし、それを聞いた多くの県民が感動を覚えたことと思います。
しかし、入所者の方は高齢化が進み(国立療養所入所者の平均年齢は86歳)、他界される方も目立ってきました。三重県出身者もその例外ではなく、寂しい限りです。
三重県でハンセン病回復者のサポートを行っている方が、以前こんなことをおっしゃっていました。「これからは入所者が帰郷するのは難しくなるため三重から訪ねていくことが必要でしょう」と。
そんな事業が行われることになりました。「ハンセン病療養所フィールドワーク」です。岡山県のふたつの療養所をバスで訪ねて隔離政策の歴史を学び、入所者と交流しようという企画です。10月19日(土)に実施されます。(定員は30人/参加費無料)
ハンセン病問題について学びたい方、三重県出身の大先輩の話を聞きたい方…ぜひこの要項をご覧ください。


  ※三重県、ハンセン病問題を共に考える会・みえ、三重テレビ放送が、
  ふれあい福祉協会の助成を受けて実施します。応募多数の場合は抽選となります。



2つの国立ハンセン病療養所がある
            岡山県の長島

2019年7月25日木曜日

デスク席から(58)「円熟の芸をじっくりと」


16回目の開催を迎えます。落語会「文治まつり」。
四日市で没した桂派の祖・初代桂文治(1816年没)を称える落語会で、四日市市出身の桂福団治さんや三重テレビ放送が中心となって、2004年に始めました。
福団治さんは関西演芸協会の会長を務める上方落語界の大御所。人情噺や手話落語の第一人者として知られます。
芸歴は60年に迫り、「藪入り」「蜆売り」「百年目」「鼠穴」といった人情噺には多くのファンが魅了されています。
説明が遅れましたが、人情噺とは、笑いに重きを置くのではなく、親子の情や夫婦の情愛などにスポットをあてた、ストーリー性豊かな噺。人情が薄くなってきたといわれる近年、より注目を集めています。
上方落語家最古参の円熟の芸をじっくり楽しんでいただきたいと思っています。

実は、今回のイベントには「三重テレビ放送開局50周年記念」という冠がついています。
それにちなんで、ほかの出演者には「50」にまつわるキャッチフレーズが。
林家菊丸さんは、三重県での地域寄席の開催がことし50ヵ所を達成。桂二乗さんは、「50キロまでなら走れます」。(笑)
 そして桂文珍さんは、この秋に芸歴50周年を迎えます。実は、文治まつりにお越しいただいた皆さんに毎回アンケートをとっている中で「ぜひよんでほしい」というリクエストが最も多いのが文珍さんなのです。
 古典落語・創作落語双方で会場を爆笑に包む文珍さんの話芸にもぜひ触れてみて下さい。
 
 落語会「第16回文治まつり」は、10月6日(日)の午後1時から四日市市文化会館第一ホールで開催されます。
 入場料は、前売3700円、当日4000円で、詳しいことは三重テレビ放送事業部(電話059-223-3380)までお問い合わせください。


2019年6月6日木曜日

デスク席から(57)「こんな番組やってました」


開局50年となる今年度、三重テレビ放送では「アーカイブス傑作選」と題して、過去に放送したドキュメンタリーなどを再放送しています。
5回目の放送は6月7日(金)。午後7時55分から「命(ぬち)どぅ宝~命こそ宝 中学生が見た沖縄~」を放送します。
これは思い出深い番組で、私が初めて本格的に取り組んだドキュメンタリー。1997年、県内の公立中学として初めて沖縄修学旅行に取り組んだ伊賀町(当時)の柘植中学校の1年間を追った番組です。
糸数ガマやひめゆりの塔の見学、元ひめゆり学徒隊の女性からの聞き取り、沖縄の中学生との交流のほか、校内での事前学習や報告会、文化祭、卒業式など一連の活動を取材しています。
放送前に番組を確認していたのですが、若い時に制作しただけに、つくりが粗いなぁと感じましたが、現代でも伝わる部分も多くありました。
なお、登場する中学生もその後社会に出て様々なことを考え、今は当時の考えと変わっているかもしれませんが、21~22年前の気持ちとして受け取ってもらえればと思います。

番組のその後を少し…。
柘植中学校はその後も毎年沖縄への修学旅行を続け、沖縄の歴史や文化、命の大切さを学んでいます。
また元ひめゆり学徒隊の島袋淑子さんはその後、ひめゆり平和祈念資料館の館長に就任し、昨年まで務められました。
7日の放送では、1年半前にお目にかかった時のお写真も少し紹介します。

なお、三重テレビアーカイブス傑作選…次は7月7日(日)午後8時から「熊野古道(2014年)」を放送する予定です。
このほかに社会や文化、地域など様々なジャンルの番組の再放送を予定しています。

2019年5月20日月曜日

デスク席から(56)「語り継ぐ四日市公害」

 四日市公害…三重県と関係深いテーマであり、平素のニュースでは取材しているのですが、私が特集などを制作した経験は、あまり多くありません。
 ジャーナリストの大谷昭宏さんに出演頂いていた「おもいっきり〇ミエTV」(1996年)や、ニュースでの環境をテーマにした特集(2000年ほか)、それに昨年12月から公開しているYahoo!ニュース特集との共同取材などです。
 それらの取材の中で、公害の記録を続けた澤井余志郎さん、四日市公害訴訟の原告で唯一の生存者だった野田之一さん、愛する娘を喘息で亡くした谷田輝子さんらにお話をうかがいました。

 入社して28年、様々な取材をしてきましたが、腰を落ち着けてやらねば語ってくれた人に申し訳ない、と感じるテーマがあります。
 (私の中では)ハンセン病問題や四日市公害がそれにあたるのではないでしょうか。
 なかなかまとめて番組化することが出来なかったのですが、今月、それが実現することになりました。

 「こっこの空~語り継ぐ四日市公害~」と題したドキュメンタリーを5月29日(水)午後8時から放送します。
 三重県出身の漫画家・矢田恵梨子さんが公害をテーマに制作したマンガ「ソラノイト」を軸にしつつ、ことし1月に亡くなった野田さんの証言や、澤井さんの生前の活動、谷田さん親子のエピソードを紹介します。
 また現在の四日市や、これからの課題についても、少し目を向けたいと考えています。
 タイトルの「こっこ」とは、谷田さんの娘・尚子さんの愛称。
 女優の常盤貴子さんが、こっこになって語ってくれる部分も多くあります。

 放送は29日の夜8時から。現在、仕上げの作業中です。良い番組にしたいと思っていますので、ぜひご家族そろってご覧ください。
<野田さん>

2019年4月26日金曜日

デスク席から(55)「GWは三重テレビを!」


三重テレビ放送は、ことし開局50年を迎えます。それを記念した企画をいくつか紹介します。

まず「平成」をたっぷり振り返る番組から。
過去のニュース映像を“庫出し”しながら三重の31年をかけめぐる番組「映像で綴る三重の平成史」は、4月28日(日)午後10時~放送。(再放送は30日の正午~)
平成の時代に話題になったいくつかの場所をバスツアー形式で訪ねる企画も。
番組には、「Mieライブ」でお馴染みの三重中京大学名誉教授・浜谷英博さんや、お笑いタレント(なぞかけ)のねづっちさんも登場します!

 過去の映像といえば、こんな企画もお薦めしたいです。
「三重テレビ・アーカイブス傑作選」。過去に放送したドキュメンタリーを中心に再放送。放送日は「7」のつく日を中心に、年間約20回。
 中学生の沖縄修学旅行、防災、伊勢神宮、熊野古道、斎王、三重の偉人、地域医療、公害…。
 初回放送は5月7日(火)午後8時からで、三重県出身のハンセン病回復者の帰郷事業の半世紀を追った「さとがえり」(坂田記念ジャーナリズム賞受賞)を放送します。
 また5月は、伊勢志摩サミットから3年。サミットを題材にした「輝きの先に」を23日に、「明日への手紙~ジュニアサミットin三重~」を24日にご覧いただきます。(時間は、いずれも午後7時55分~)

そして、平成から令和にかけての「Mieライブ」は、19時25分までの拡大版。
30日は、前三重県知事の野呂昭彦さんにコメンテーターとして出演いただき「平成」について振り返ってもらうほか、1日は、ジャーナリストの大谷昭宏さんらが「令和」の時代を展望。ぜひご覧ください!